2017年度プロジェクト採択チーム 株式会社ハチたま インタビュー

IoTをテーマとしたビジネスプランコンテスト「北九州でIoT」が今年も開催される。

これは、ものづくりの街として知られる福岡県北九州市が推進するもので、【ビジネスモデルに加え、ものづくりまで開発支援】を合言葉に、強力なメンター陣と最大100万円の支援が受けられるビッグプロジェクトだ。

日本全国の個人・学生・ベンチャー・中小企業(第二創業)から応募を受け付けており、ものづくりの経験のない方でも「オール北九州」で支援を受けられる。グランプリといった形での優劣ではなく、最大6枠のアイディアが採用され、事業化を目指した具体的な支援が得られることも大きな特徴だ。

初の試みとなった昨年度のコンテストでは、猫の健康管理ができるIoTトイレ「トレッタ」が採択され、わずか半年で事業化までこぎつけ、大きな話題となった。

トレッタを世に送り出した「株式会社ハチたま(本店・東京都中央区)」の平畑輝樹氏(北九州支店長兼チーフプロダクトオフィサー)に、応募のいきさつや成功の秘訣についてお話を伺った。

応募のきっかけ

「猫のトイレ」という構想を持ったのは、2017年の夏のことでした。
アイディアをカタチにしてみたいと思っていた頃、たまたまテック系のニュースで「北九州でIoT」というコンテストが実施されることを知ったのです。
僕は北九州高専の出身なので、「へぇ、地元の自治体でこんなことやっているんだ」という気持ちでニュースを読みました。応募要項を見ると、100万円の支援金と、専門家のサポートが受けられると知って「これだ!」と思ったのです。

応募対象の間口が広かったのも魅力でした。
個人でも法人でも応募できるし、どうやらベンチャーも大歓迎らしいので、ピッタリだな、と。ちょうどその頃、弊社では新規ビジネスの構想を練っていた時期だったんです。

さっそく、弊社の代表・堀宏治に、コンテストに応募したい旨を伝えました。ところが、神奈川県出身の堀には「北九州=ものづくり」というイメージがないんですよ。
「そういえば、教科書にそう書いてあったかな・・・」という感じで。
そもそも、代表は、ものづくり畑の人間ではなく、データのほうが専門分野なんです。
ですから、最初は全然前のめりじゃなくて「いいんじゃない?やってみても」という感じでした(笑)。

北九州で実施するコンテストですが、東京・大手町でも説明会が開催されることを知って、代表と一緒に参加しました。そこで、主催者からコンテストの概要を直接聞けたんですよね。コンテストの概要を理解してからの代表のスイッチの入り方は凄かったです。
「よし、やろう!」と決めたあとは、僕の準備していたプレゼン骨子も「全部見せて」と言われ、たちどころにブラッシュアップを始めました。

書類審査から試作まで

「北九州でIoT」は、このタイプのコンテストではすごく珍しい「モノの試作ができる」という特徴があります。

「トレッタ」は猫の腎不全の初期症状をモニタリングするスマートトイレですが、実は、コンテストに応募した時点とはアイディアが違っているんですよ。応募の時点のコンセプトは、「自動で掃除してくれるトイレ」でした。

ところが、書類審査を通過して、改めて猫の飼い主さんたちにヒアリングを行ったところ、一番解決したい問題は「猫の健康管理」だということがわかったのです。

当初のアイディアは「自動掃除トイレ」だったので、そういった機能のトイレを試作していたんですが、途中で「自動掃除」部分をスッパリと辞めて、「猫の健康データを収集する機能」に絞ることにしたのです。

普通、モノの受発注において、途中で仕様を変更するのは難しいですよね。だって、もうオーダーは済ませ、制作期間に入っているところに「途中で変えたいんですけど」なんて。
それなのに、主催の北九州市も、モノ作りの部分をサポートしてくれた北九州高専も、「あ、いいですよ」とあっさり受けてくれました。

この、ゆるさというか、柔軟な対応のおかげで「トレッタ」は産声を上げることができたと思っています。
コンテストのコンセプトが「アイディアをカタチにする」だったからこそ、フレキシブルな対応も可能なんでしょうね。
とても感謝しています。

北九州ならではのネットワーク

コンテストは優劣を決めるタイプではなく、審査を通過した最大6つのプランが専門家のサポートのもとに試作品を作り、春のデモデイにお披露目をする、というものでした。
その過程で一番ありがたかったのは、いろんな方とネットワークを築けたことですね。
IoTは、様々な方が関わらないと実現できないのですが、自治体の担当者が親切に色々な企業と人を紹介してくれました。
そうやって紹介を受けた先から、さらに「そういうことなら知り合いの●●さんを紹介するよ」といって、どんどん人脈が広がっていくんですよ。最終的には、北九州市内に留まらず、別の地域まで広がっていきました(笑)。
これは、【ものづくりのDNA】を持つ、北九州市ならではの人柄・土地柄かもしれませんね。世話焼き気質の方が多いんですよ。ものづくりに関して人的ネットワークがしっかり存在しているのは、ほかの地域にはない大きな強みだと感じました。

といいますのも、北九州市以外にも同様のサポート体制があることを知って、いくつかの自治体にコンタクトを取ったことがあるんです。ですが、ものづくりというより、ソフト寄りの話になりがちで。
そうすると、アイディアをカタチにする、という第一のステップを超えることがちょっと難しいな、と思いました。

そういう経験もあったので、ものづくりに特化した土壌と体制のある北九州市だと、次のステップにすすみやすいことも実感できました。

アイディアをカタチにするむずかしさ

アイディアはあるのにモノが作れない人のほうが、圧倒的に多いと思います。
カタチにしようと思ったら、【北九州でIoT】じゃないと、まず無理じゃないかな、と思います。

なぜなら、ものづくりは【最初の発想をカタチにすること】が一番難しいからです。
僕はハードのエンジニアだから言えるのですが、ものづくりは専門家がいないと作れません。
だって、どんなに言葉を尽くしたところで、アイディアの段階では他の人にはなかなか伝えられないからです。

現実にモノが先行しないことには、その先のステップであるソフトの制作にも進めません。
だからここが一番の難所になります。
普通のビジネスコンテストでは、ビジネスモデル寄りのアドバイスはいただけます。
だけど、モノを作る部分での支援は、ちょっとやそっとではできないと思うのです。

「北九州でIoT」は、「頭の中のアイディアをカタチとして出現させる」サポートに特化していることが、他のコンテストにはない特色だと思いますね。

IoTはオーケストラだ

従来のものづくりは、マテリアルがあって、それを形成するだけでよかったのです。
だけど、IoTって、ものすごく大勢の方が関わらないと実現できないことなんですよね。
IoTは「モノのインターネット」。モノをインターネットにつなげなければIoTではありません。
つなぐためには技術者が必要。そのためにはモノに電子基板を入れて、そこに電気を通す設計者が必要になります。サーバーにつなげる人も必要です。サーバーに蓄積したデータをアプリで活用する場合、アプリの設計者も必要…というふうに、IoTは、インターネットのその先を知らないとやれない事業なんです。
たとえパーツごとの専門家をかきあつめたところで、モノはネットにつながりません。
全体像を把握して、横断的に指揮するスキルのある人がいないとダメなんです。

代表の堀はこう言っています。
【ものづくりはバンド活動。だけど、IoTはオーケストラだ】って。
たくさんの人が関わって一つの楽曲を奏でるのですから、大変です。
だけど、そこに挑戦することで、新しいビジネスチャンスが生まれると思います。

チャンスを掴みたい方へアドバイス

僕の所属する株式会社ハチたまは、東京・銀座に本店を置くスタートアップですが、「北九州でIoT」に応募したことで、短期間で事業化にこぎつけることができました。

【アイディアをカタチにする】と口で言うのはとても簡単ですが、大勢の人が関わらないと実現できません。
このコンテストでは賞金のほか、業界の最先端を走る複数の専門家からメンター支援を受けられます。なんといっても、北九州高専がハード面でバックアップしてくれたことは心強かったですね。
資金面においても、人的支援の面でも、具体的なサポート体制は、「オール北九州で支援します」という謳い文句のとおりで、自治体としての本気度を感じます。

冒頭に申し上げたとおり、「猫のトイレ」というコンセプトを思いついたのは一年前の夏でした。
今や、開発拠点となる事務所を北九州市にオープンし、「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる」というミッションを掲げ、猫の健康管理ができるIoTトイレ「トレッタ」事業をスタートさせることができました。

一般的にペット用IoTデバイスはハードウェア本体の売り切りモデルで販売されますが、トレッタは体調変化を見守る「ねこヘルスケアサービス」です。初期費用0円、月額わずか500円で使用できる画期的なこのサービスは、『世界猫の日』である8月8日にリリースします。日本だけでなく、いずれは海外展開も視野に入れ、世界中の猫の健康を見守ります。

ベンチャー企業や、個人での起業を考えている人には、ぜひとも「北九州でIoT」に応募してもらいたいですね。
ものすごく大きなチャンスを掴むきっかけになると思います。
僕たちに続くスタートアップの登場を、心から応援しています。

 

【会社概要】
商号 :株式会社 ハチたま
代表者:代表取締役社長 堀宏治
設 立:2015年3月20日
資本金:8900万円(資本準備金含む)
所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座7-5-4毛利ビル2階(本店)
〒248-0026 神奈川県鎌倉市七里ガ浜1-1-1-103 (湘南拠点)
〒803-0856 福岡県北九州市小倉北区弁天町5-2 南小倉駅前ビル503 (北九州支店)
〒227-0047 神奈川県横浜市青葉区みたけ台 (横浜)
https://toletta.jp/